茶道(さどう)とは、日本の伝統的なお茶の芸道です。
日本の茶道を知ることで、日本の伝統的なお茶の作法と日本特有のおもてなし精神を学ぶことができます。
この記事では、日本の茶道の特徴と歴史、流派、基本的な流れ、日本の茶道で大切なこと、日本の茶道を体験できる場所を紹介しています。
読めば日本の茶道について詳しく理解できますので、茶道に興味のある方はぜひ最後までご覧ください。
日本の茶道とは
茶道とは、お茶会の場で亭主(お茶会の主催者)が伝統的な作法に従ってお茶を点(た)てて、客人に振舞う芸道のことです。
茶道で振舞われるのは「抹茶(まっちゃ)」という、粉状になった茶葉で作られる日本茶です。
抹茶はお湯を加えたら茶せんで手早くかき回して泡立てて作ることから、その意味を表す「点てる(たてる)」という言葉が茶道で使われます。
抹茶が振舞われるのは、お茶が日本に広まった頃、茶葉を石臼(穀物を粉にするための道具)で粉末状にする飲み方が重宝されていたからという説があります。
茶道の伝統的な作法には主に以下があり、それぞれの作法で行われる動作が決まっています。
- お茶の点て方
- 茶室(お茶を飲む部屋)への入り方や立ち振る舞い方
- お茶の飲み方
また、茶道では以下のような作法以外のことも大切にされます。
- 茶室の空間
- お茶を点てるときの道具
- お茶と一緒に出す和菓子
上記は、亭主が客人に美味しいお茶を振舞ったり、客人が亭主によるお茶のおもてなしをマナー良く受けるたりするためにあるものです。
茶道では、日頃私たちが行っているようなお茶の作り方や出し方をするのではなく、伝統作法に従いながら相手のことを思いやってお茶を点てたり、お茶を点ててくれた人に敬意を払って飲んだりすることが重んじられます。
このような考え方は、日本人独特の「主張せず、見えないところで相手を気遣って心配りをする」という「おもてなし精神」に通じています。これは、昔から日本人が大事にしている「他人への礼儀」に関する考え方の一つです。
日本の茶道を知れば、伝統的なお茶会のマナーだけでなく、日本人のおもてなし精神についても学べるのです。
日本の茶道の歴史
日本の茶道の歴史は、鎌倉時代(1,185年~1,333年)までさかのぼるといわれています。
中国に渡っていた栄西(えいさい)という僧侶が、禅宗(ぜんしゅう)という宗教と共にお茶を日本へ持ち帰った後、日本製の茶道具を使って茶室でお茶を飲み始めたことが茶道として広まったそうです。
そんな茶道が大きく発展したのは、千利休(せんのりきゅう)という茶人(お茶に精通する人)がきっかけでした。
当時の茶道は、お茶会の亭主と客人が心の交流を図る「わび茶(貴族などが開催する豪華なお茶会ではなく、庶民でも行える質素なお茶会)」の精神が取り入れられていました。千利休はわび茶をさらに発展させ、質素な茶道具を積極的に使用したり、小さな茶室で落ち着いた雰囲気を重視するなど、亭主と客人の心の交流を重視するスタイルにしたそうです。
やがてこの千利休の取り組みが日本へ大きく広まり、それが現在の日本の茶道のベースとなりました。
日本の茶道三大流派
日本の茶道といっても様々な流派(方法などの違いから生じて分かれた集団)があり、それぞれの流派ではその流派の作法に従って茶道が行われます。
日本の茶道には有名な流派が3つあります。「茶道の三大流派」と呼ばれ、これらは茶道の大きな発展に貢献した千利休の子孫が作った流派です。
ここではこの茶道の三大流派について、特徴を説明していきましょう。
裏千家(うらせんけ)
1つ目は、千利休の孫である千宗旦(せんそうたん)の四男、仙叟宗室(せんそうそうしつ)が確立した「裏千家」です。裏千家における「茶道」の読み方は、「ちゃどう」です。
裏千家は、茶道の流派の中でも最も学ばれることの多い流派です。日本には裏千家を学べる教室や書籍が充実していることから、この裏千家の作法を習得する日本人は多いといえます。
裏千家の作法の特徴は、動作が華やかであったり、時代の変化に合わせた作法を取り入れたりしていることです。
たとえば、お茶を点てるときはよく泡立てます。
さらに、海外の方向けにテーブルと椅子を使ったお茶の振舞い「立礼(りゅうれい)」というスタイルも始めました。通常、畳の上で正座して行っていたお茶会を、テーブルと椅子で楽しめるようにしたものです。
茶道を積極的に世界へ広める姿勢も持っているのも、裏千家の特徴です。
表千家(おもてせんけ)
2つ目は、千宗旦の三男、江岑宗左(こうしんそうさ)が確立した「表千家」です。表千家における「茶道」の読み方は、「さどう」です。
表千家の作法の特徴は、動作が控えめであることです。たとえば、お茶を点てるときはあまり泡立てません。
裏千家とは反対で古くからの作法を大切にしています。
武者小路千家(むしゃこうじせんけ)
3つ目は、千宗旦の二男、一翁宗守(いちおうそうしゅ)が確立した「武者小路千家」です。
武者小路千家の作法の特徴は、表千家と同様動作が控えめであることに加え、無駄を省く合理的な作法を取り入れていることです。たとえば、茶室には華やかさはなく、質素でシンプルな装飾を施しています。
武者小路千家では時間をかけてお茶を楽しむことを重視するため、堅苦しい言い方の「茶道」ではなく、楽しいお茶会を意味する「茶の湯(ちゃのゆ)」と呼ぶのが一般的です。
茶道の魅力
茶道の魅力とは何でしょうか?
茶道とは、ただお茶を飲んで楽しむだけのものではありません。
日本の四季折々の季節を感じて心を落ち着かせることができたり、「おもてなしの心」や「美しい動作」を学ぶことができます。そこからきっと、日本の伝統文化にどんどん興味が出てくることになると思います。
日本の古いお城やお寺を観光するのも良いですが、茶道は自分が実際に体験することができます。茶道を体験することで、日本の伝統文化を直接感じることこそが茶道の最大の魅力だと思います。
茶道を通じて、日本の街中では感じることができない「日本の伝統文化」を体験してみてはどうでしょうか?
日本の茶道の基本的な流れ
ここでは日本の茶道の基本的な流れを説明します。流派によって変わることもありますが、基本的な流れを知っておけば安心して茶道体験会やお茶会へ参加できます。
茶室へ入室
前述した通り、茶道では客人をもてなすために亭主が茶室の空間にも気を配ります。
茶室に入ると、流派によって茶室の雰囲気は変わりますが、たとえば生け花(器に飾られている花や草木)や掛け軸(書画や絵画を掛けて観賞できるようにした飾り物)など、茶室を彩る装飾品が出迎えてくれます。
このような亭主の心配りの作法がある一方で、客人にも作法が求められます。
茶室へ入るときに行うべき基本的なことは、次の通りです。
- アクセサリーや腕時計などの身に付けているものは全て外す(茶道で使う道具を傷つけないようにするため)
- 洋服を着ている場合は、白い靴下を履く(茶室の畳を傷つけないようにするため)
- 茶室の障子(しょうじ)は座って開ける(茶室にいる亭主を見下さないようにするため)
- 畳の縁(へり)を踏まずに歩く(畳の縁は亭主と客人を区別する意味のため、踏むとその意味を崩すことになる)
亭主への最初の挨拶
茶室へ入ったら、お茶を点てる亭主へ最初の挨拶をします。
席についたらお辞儀をしながら「よろしくお願いします」と言いましょう。
この後、亭主による茶道体験会やお茶会の挨拶が行われるのが一般的です。
このとき、客人はその挨拶返しを行います。「本日はお招きいただきありがとうございます」といったように、茶道体験会やお茶会へ参加できることの感謝を伝えましょう。
和菓子(茶菓子)をいただく
茶道では、お茶の味を引き立たせるために和菓子(茶菓子)が振舞われるのが一般的です。
茶道体験会やお茶会によって異なりますが、主に次のような和菓子が添えられます。
落雁(らくがん)
砂糖や水あめ(粘り気のある甘味料)を入れた米などの穀類の粉が原料の和菓子
練り切り(ねりきり)
砂糖と山芋(加熱するともっちりとした食感の芋)、みじん粉(もち米を加工した粉)、白餡(白小豆で作られる餡)が原料の和菓子
和菓子は、多くの場合は菓子器(かしき)と呼ばれる器に参加者数分運ばれてきます。
亭主から勧められたら、次の人に対して「お先に」と挨拶をして自分の分の和菓子を取り、次の人に器を渡すのが作法です。
自分の分の和菓子を取ったら食べます。お茶より先に和菓子を食べるのは、和菓子を食べたときに口の中に残るほのかな甘さが、お茶を美味しくさせるからです。
茶道体験会やお茶会で添えられる主な和菓子の落雁や練り切り、そして和菓子の食べ方については「和菓子とは?その特徴・種類・食べられる場所を紹介」で詳しく紹介しています。茶道体験会やお茶会へ参加することになったら、ご覧になってみてください。
抹茶をいただく
和菓子を食べたら、次の作法に従って抹茶を飲むのが一般的です。
- 「お点前(おてまえ)ちょうだいします」と言って、お辞儀をする
※「お点前」とは、お茶を点てる動作のこと - 右手で茶碗を取り、左手に乗せる
- 茶碗の正面を自分に向けないようにするために、茶碗を90度x2回、つまり合計180度回す(右左どちらでも可)
茶碗を拝見する
抹茶を飲んだら、茶碗を拝見します。
茶道では客人をもてなすために茶道具にもこだわるため、茶碗には亭主の強い思い入れがあります。その思い入れを受け入れるために茶碗を拝見することが、茶道では礼儀なのです。
茶碗は、畳の縁に重ならないように置き、低い位置で見るようにしましょう。
亭主への最後の挨拶
茶碗の拝見が終わり、亭主へ「ありがとうございました」などの最後の挨拶をしたら茶道体験会やお茶会は終了です。
日本の茶道で大切なこと
日本の茶道で大切なことは、「四規七測(しきしちそく)」です。
四規七測というのは茶道を発展させた千利休の言葉で、現在の日本のおもてなし精神の基本となっている考えをいいます。
千利休は「四規(しき)」と「七測(しちそく)」に分けて、次のようなことを述べています。
四規(しき)
茶道において亭主と客人がお互いに思いやるために心がけるべき4つの標語です。
- 和(わ)…心を開いてお互い仲良くする
- 敬(けい)…お互いに尊敬し合う
- 清(せい)…目に見えるものの他、心も清らかにする
- 寂(じゃく)…どんなときでも動じない
※参考:お茶の心ってなんだろう | 裏千家ホームページ 茶の湯に出会う、日本に出会う
七測(しちそく)
茶道で大切となる7つの基本的な心構えです。
- 茶は服のよきように点て…心を込めてお茶を点てること
- 炭は湯の沸くように…お湯がよく沸くような炭の継ぎ方を見極めること
- 花は野にあるように…野に花が咲いていた状態を感じさせるように生けること
- 夏は涼しく、冬は暖かに…季節感を大切にすること
- 刻限(こくげん)は早めに…時間を大切にしてゆとりを持つこと
- 降らずとも雨の用意…どんなことがあっても落ち着いて行動できるよう準備と用意をすること
- 相客(あいきゃく)に心せよ…客人はお互いを尊重し合って楽しく過ごすこと
※参考:お茶の心ってなんだろう | 裏千家ホームページ 茶の湯に出会う、日本に出会う
日本で茶道体験会やお茶会に参加する機会があれば、ぜひこの四規七測を思い出して望んでみてください。
日本の茶道を体験できる主な場所
最後に、日本の茶道を体験できる主な場所を4つ紹介します。
ここまで読んできて「茶道体験をしてみたい」や「お茶会に参加してみたい」と思ったら、次の場所からぜひ探してみてください。
茶道教室
茶道教室は、日本の茶道を体験できる定番の場所です。本格的な茶道を学べるため、日本人も茶道を習いたいときはまずこの教室に通います。
通常、茶道教室では時間をかけて本格的な茶道を習得していきますが、体験といった形式で1回限りの講座を設けている教室も多いです。観光など短期間で日本に来ていて、1回でも本格的な茶道を体験してみたい方にオススメできます。
訪問先に茶道教室があるかを調べ、あれば茶道体験を開催しているかを確認しましょう。
茶道教室が開催している茶道体験の料金は、1人2,000円~5,000円が目安です。
和菓子屋
茶道では和菓子が添えられることから、和菓子屋でも茶道体験を設けていることがあります。
和菓子屋の茶道体験の魅力は、その和菓子屋で販売されている和菓子と抹茶を一緒に楽しめることです。体験当日に作られた新鮮な和菓子をいただけることもあります。
茶道体験で食べた和菓子でお好みを見つけた場合は、その和菓子屋で売られていれば買って帰ることもできます。
茶道体験と同時に抹茶に合う和菓子を知りたいときに、和菓子屋で茶道体験をする日本人もいるといって良いでしょう。
和菓子屋が開催している茶道体験料金は、1人1,000円~2,000円が目安です。
お寺
お寺でも茶道体験を開催しているところがあります。
お寺が持つ静寂な雰囲気の中、茶道において大切な四規の「寂」(どんなときでも動じない)を感じながら茶道を学べるところが魅力です。
お寺の中には、茶道体験の後に座禅(座って精神を統一させる修行)体験を設けているところもあります。心と体をリセットしたいとき、お寺で茶道体験をする日本人もいます。
全国すべてのお寺で茶道体験が行われているわけではないため、興味があれば訪問先にあるお寺で開催しているかどうかを確認してみると良いでしょう。
お寺で開催されている茶道体験料金は、1人1,500円~3,000円が目安です。
呉服店(ごふくてん)
茶道では日本の伝統的な服「着物」を着る機会が多くあるため、着物の販売店である呉服店でも茶道体験ができることもあります。
呉服店における茶道体験の魅力は、着物を着て茶道を学べるところです。その呉服屋で販売されている着物をレンタルする形で着用し、茶道を体験できます。
着物は日本の伝統的な服ではありますが、現代の日本人が普段の生活で着物を着ることはめったにありません。そのため、日本の伝統文化を学ぶために、呉服店で着物を着ながら茶道体験に参加する日本人もいます。
呉服店の茶道体験料金は、1人8,000円~10,000円が目安です。
着付け(きつけ)教室
着物の着方を習える着付け教室でも、茶道体験ができることもあります。
着付け教室での茶道体験の魅力は、着物の着方と茶道の作法を両方学べるところです。
前述した呉服屋では、茶道用の着物をレンタルしてくれるだけですが、着付け教室では着物の着方から教えてもらうことができ、その後茶道を体験できることが多いのです。
前述した通り、現在の日本人は着物を普段の生活で着る機会が少ないため、着物の着方が分からない日本人も多く、その着方を習得しながら茶道を学ぶ日本人もいます。着物を着て茶道を体験したいとき、せっかくなら着物の着方も学びたい方にオススメです。
着付け教室の茶道体験料金は、1人12,000円~15,000円が目安です。
まとめ
茶道は、日本の伝統的なお茶の作法と共に日本特有のおもてなし精神を知ることができる芸道です。
茶道教室といった専門的な教室から、茶道と深く関わりのある和菓子屋やお寺、呉服店、着付け教室まで幅広い場所で学べます。
ぜひお好みの場所で茶道を体験してみてください。
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